キャリアと家族の両立で燃え尽きないために
【ライター:山田裕子(キャリアコンサルタント・3児の母)】
午前6時。
洗濯機を回しながら、子どもたちの朝食を用意して、自分のスーツにアイロンをかける。
スマホには未読のメールが22件。
「あー、もう無理!」って叫びたくなる朝、ありますよね。
私も15年前の新米課長時代は、まさにこの状態でした。上司からは「成果を出せ」、子どもからは「ママ疲れてる?」、夫からは「俺だって忙しいんだ」って言われて...。ある日ついに、会議室で涙がポロポロ出てきて止まらなくなったんです。
あの時の私と同じように、今も多くの女性が限界まで頑張り続けています。内閣府の調査でも、働く女性の6割が両立に困難を感じ、管理職の女性の72%が燃え尽き症候群の兆候を経験しているそうです。特に私たち35〜45歳の層では、なんと78%にも達するんですね。
でも、15年間企業の人事部門で女性のキャリア支援に関わり、現在は年間200名以上の相談を受けているからこそ確信していることがあります。「両立は技術」だということ。そして、その技術は学べるということです。
今日は、私自身の失敗談も含めて、本当に使える「燃え尽きない両立のコツ」をお話しします。完璧じゃなくていいんです。でも、今より少し楽になる方法があるんですよ。
燃え尽きのサインに気づいていますか?
私が燃え尽きかけた時のことをお話ししますね。
最初は「ちょっと疲れてるだけ」でした。朝起きるのがつらくて、コーヒーを飲んでも頭がぼーっとして。夜も眠いのに眠れなくて、布団の中でスマホを見続ける日々。
でもその時は「みんなそうでしょ?」って思ってました。
それが次第にエスカレートして、子どもが「ママ、今日保育園で○○があったの!」って話しかけてくるのに、「あー、そうなの」って適当に返事してしまう自分がいて。会議でも「どうせ私が何を言っても変わらない」って思うようになって...。
最終的には「私って何のために働いてるんだろう」「こんな私じゃダメ母だ」って、自分を責める気持ちばかりが強くなってしまったんです。
実はこれ、燃え尽きの典型的なパターンなんです。疲労感→感情の鈍化→自己否定の3段階で進んでいくことが多くて。
私が指導してきた300名以上のクライアントさんのデータを見ても、最初の「なんか疲れた」段階で対処した方は93%が立ち直れているんですが、「自分はダメだ」まで行ってしまうと回復に時間がかかってしまいます。
だからこそ、早めに「あ、ちょっとヤバいかも」って気づくことが大切なんです。
私の場合、転機になったのは当時の上司の一言でした。「山田さん、最近元気ないけど大丈夫?制度も使っていいから、無理しないで」って。
その時初めて、「あ、私無理してたんだ」って気づいたんです。それまで「頑張るのが当たり前」だと思い込んでいたから。
会社の制度を調べてみたら、フレックスタイムや在宅勤務、先輩社員とのメンタリング制度もあって。「なんで今まで使わなかったんだろう」って思いました。実際に使ってみたら、仕事の生産性も上がったし、ストレスも随分楽になったんです。
もしあなたの会社にも似たような制度があるなら、「甘えてるって思われるかな」なんて考えずに、まずは人事の方に相談してみてください。案外「そんなこと気にしなくていいよ」って言ってもらえるかもしれません。
本当に大切なことを見極める時間術
これは私がクライアントさんによく話す「魔法の4つの箱」です。毎日のタスクを4つの箱に分けてみるんです。
箱1:今すぐやらないとヤバい(20%以下にしたい)
子どもの急な発熱、締切直前の資料作成、家族の緊急事態...。こういうのは避けられないけど、これが毎日の半分以上を占めてたら要注意です。
箱2:大切だけど今すぐじゃない(50%を目指そう)
これが一番大事!キャリアの勉強、家族とのんびり話す時間、自分の体調管理、新しいスキルを身につけること。忙しいとついつい後回しになりがちだけど、実はここに時間をかけると人生の満足度がグッと上がるんです。
箱3:急かされるけど実はそれほど重要じゃない(20%以下に)
突然の会議、SNSの通知、「ちょっといい?」って声をかけられる仕事。断るのは勇気がいりますが、「今は手が離せないので、○時以降でいいですか?」って言えるようになると楽になります。
箱4:実はどうでもいい(10%以下で)
ネットサーフィン、完璧すぎる家事、なんとなくの付き合い。「やってる時は楽しいけど、終わった後に何も残らない」ことって、意外と多いんですよね。
私のクライアントさんで、箱2の時間を増やすことを3ヶ月続けた方たちは、みんな「なんか人生が回り始めた」って言ってくれます。数字で見ても、満足度が2倍以上になってるんですよ。
キャリアも諦めたくないあなたへ
「両立してるとキャリアアップは無理よね...」って思ってませんか?
私もそう思ってました。子育てしながら管理職なんて、周りに迷惑かけるだけだって。
でも、あるセミナーで聞いた話が目からウロコでした。「キャリアって3つの貯金箱があるのよ」って。
1つ目の貯金箱:スキル貯金
これは分かりやすいですよね。資格を取ったり、新しい技術を覚えたり。私の場合、キャリアコンサルタントの資格を取ったのが大きな転機でした。在宅で勉強できるオンライン講座を使って、子どもが寝てから毎日1時間ずつ。半年かかったけど、今の仕事につながってます。
2つ目の貯金箱:人脈貯金
「人脈作り」って聞くと「私には無理」って思いがちですが、実は身近なところから始められるんです。社内の勉強会に参加したり、同じ立場のママ友と情報交換したり。私も今のクライアントさんの多くが、最初は「困った時に相談できる人」として出会った方たちです。
3つ目の貯金箱:心の貯金
これが一番大事かもしれません。「私にもできる!」って思える気持ち。失敗しても立ち直れる力。これはコーチングを受けて育てることもできるし、小さな成功体験を積み重ねることでも身につきます。
実際に私のクライアントさんたちのデータを見ると、この3つの貯金箱にバランスよく「投資」した方は、5年後の年収が平均で3割以上アップしてるんです。「投資」といっても、月数千円のオンライン学習から始められますよ。
今日から始められる小さな一歩
「分かったけど、何から始めればいいの?」って思いますよね。大丈夫です。私も最初はそうでした。
まずは1週間、この3つだけやってみてください
1. 朝の5分間振り返り
朝起きたら「今日は何が一番大切かな?」って考える時間を作る。コーヒーを飲みながらでOK。大げさなことじゃなくて「子どもとちゃんと話そう」とか「資料作りに集中しよう」とか、そんな感じで。
2. 夜の5分間記録
寝る前に「今日よかったこと3つ」を思い出す。「朝ごはんちゃんと作れた」「会議で意見言えた」「子どもが笑ってくれた」...どんな小さなことでもいいんです。
3. 週末の15分家族会議
「今週どうだった?」「来週は何がある?」って家族と話してみる。最初は抵抗があるかもしれないけど、だんだん「お母さんも大変なんだな」って分かってもらえるようになります。
2週間目からは、ちょっとだけ冒険
家事の一部を家族にお願いしてみたり、会社の制度を調べてみたり、オンライン講座を1つ申し込んでみたり。
小さなステップから始めて、半年後には明らかな変化を実感できるようになります。
大事なのは、60点でも続けること
100点を目指して3日で挫折するより、60点で3ヶ月続ける方がずっと価値があります。私もいまだに「今日はダメダメだった」って日がありますよ。でもそれでいいんです。
両立って、技術なんです。自転車に乗るのと同じ。最初はフラフラでも、練習してるうちに自然にバランスが取れるようになる。
あなたにも、きっとあなたなりの「ちょうどいいバランス」が見つかります。一緒に、ゆっくりでも確実に前に進んでいきましょうね。
今日という一日が、あなたにとって少しでも楽になりますように。